参加者の声vol.2「光のかけらを集める」
2021-10-08

朗読教室ご参加の方に寄せて頂いた言葉をご紹介します。

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「光のかけらを集める」 大勢待なつみ  

美しい、ウツクシイとはいったいどんなことでしょうか。

風が吹くこと、季節が移り変わること、誰かのちょっとした所作、ろうそくの火、テキストの横にきちんと並べられたシャープペンシル、丁寧に淹れられたお茶、丁寧に作られた食事、遠くの誰かを想うこと、なんにも言わずにそこにいること、「あめんぼ あかいな あいうえお」 ひらがなのひとつひとつの音を発音してみること、誰かの朗読する声に耳を澄ますこと・・・

  岡安さんの朗読会に出会い、朗読教室へ通うようになってから、何気なく通り過ぎてしまうことの中に、時折きらりと光るものが美しいと感じられるようになりました。 また、朗読教室を通じて、そういうことが美しいと感じている人たちに出会っていったことはとても大きなことだったと思います。  

それまで一人で読書をしていた私は、ある日、「そうだ、書を持って町へ出てみよう」と思い立ち、本当に本を脇に抱えて町へ出てみました。それから流れに流れて、出会いに出会って朗読教室ウツクシキにたどり着いたのです。気づけば西荻窪のアトリエ・ハコさんで最初に聴かせて頂いた「TWELVE LETTERS」という朗読会から5年の月日が経ちました。 自分にとってこれはという出会いは、もしかしたら静かにどこかで用意されていて、かすかな予感と共にある日やってくるものなのかもしれません。

  生きていると、たくさんの雑事やさまざまな思いに追われて日々は過ぎていきます。でも朗読教室でテキストに向かう時、そこには呼吸と言葉と余白と自分の感覚しかありません。 そしてテキストを開けば、もう随分前に書かれた文章なのに、いつだって主人公たちは鮮やかに風を巻き起こしていたり、空や海を見つめていたり、男女の駆け引きをしていたり、夕暮れ時にりんごをかじりながらこの世界と対峙していたりします。時に自分が作者と物語の間に立って、これから起こることを草穂の陰からそーっと眺めているような気持ちになります。目で追って文章を読んでいる時とは違った物語が動き出すのです。

朗読教室を続けていると自分の声が好きとか嫌いとか、朗読がうまいとかうまくないとかそういうことはだんだん気にならなくなっていきました。先生や教室で一緒になった生徒さんの朗読に耳を澄ましていると、なにか大事なもの、人が生きていくうえでかけがえのない光のかけらみたいなものが、その朗読する声の先に見えるような気がします。

  美しさが響きあっていくこと、そして少しのユーモアとスパイスが朗読にも人生にも必要なのかもしれないと思う今日この頃です。もしもグループレッスンでお会いした時には、どうぞよろしくお願いいたします。

初回:2017年1月~
教室を知ったきっかけ:2016年10月西荻窪 アトリエ・ハコ朗読会「TWELVE LETTERS」

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